通信障害が多いキャリアはある?大手4社の主要事例と備え

30秒で読む要点

  • 公開資料だけでは「障害が多いキャリア」の順位は決められない。この記事の表は各社1件ずつ選んだ事例であり、全障害の件数表ではない。重大事故未満の障害を同じ条件で横断集計した公式統計も確認できなかった
  • 事例ごとに影響時間・人数・サービスの定義が異なる。KDDIの2022年障害は61時間25分、KDDI単体で音声約2,278万人・データ765万人以上という推計だが、音声とデータの重複有無は公表資料から確認できない。単純合算や他社との順位比較はできない
  • 各社は障害後に原因と対策を公表している。ただし、公表済みの数件だけから現在の故障率や次の障害の起こりやすさを推定することはできない
  • 異なるMNOのデュアルSIMは単一網への依存を減らせる。一方、災害、停電、端末故障や共有設備の障害では両回線が使えない場合もあり、通信の継続を保証する対策ではない
  • JAPANローミングは携帯5社が協議して提供地域・期間・方式を決める。対応端末、契約先、利用できる機能に条件があるため、発動時は契約先の公式案内を確認する
個人の調査メモです。追跡できる公開情報を条件付きの傾向として整理しています。 通信品質は端末・場所・時期で変わるため、契約前には各社の公式情報もご確認ください。

この調査で確認したこと

大手4社(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル)から、原因・影響・復旧を公式資料で追える通信障害を1件ずつ選んで確認した。全障害を同じ条件で集計した表ではないため、キャリア別の発生頻度や優劣の順位には使わない。

「繋がらない」原因全般については「スマホが繋がらない原因をキャリア別に調べてみた」にまとめている。ここでは事業者設備の故障・設定、輻輳、災害などによる通信サービスへの影響に絞って整理した。

訂正(2026年8月10日): 訂正前はKDDIの2022年障害を「86時間・3,091万人」と一括表記し、重大事故とフルローミングの条件も一律に説明していた。訂正後はKDDIの2022年7月29日公表資料が示す影響時間61時間25分と音声・データ別の推計人数、役務別の重大事故基準、契約先ごとに異なるローミング機能へ修正。一次資料の定義確認が不十分だったことが原因。異回線で備えるという結論は変わらない。

再編集(2026年8月12日): 追跡できない体験談、選定した4事例から導いた障害頻度・企業優劣、デュアルSIMで通信を確実に維持できるという断定を撤去。タイトルも内容に合わせ、一次資料で言える範囲と備えの条件を明示した。

一次資料で確認した大手4社の4事例(抜粋)

影響時間・範囲・原因を事業者または行政の資料で追える事例を、各社1件ずつ時系列で整理した。選定した4件は全件一覧でも件数統計でもなく、この表だけでは「どこが多いか」を判断できない。

2026年8月12日、各事例の公式資料と現在の障害情報ページを再確認。

時期 キャリア 期間 影響規模 原因
2026年7月 楽天モバイル 約53分 全国の一部利用者 設備故障
2022年7月 au(KDDI) 61時間25分 KDDI単体: 音声約2,278万人/データ765万人以上(推計) メンテナンス中のルーティング設定ミス → VoLTE交換機に輻輳波及
2021年10月 NTTドコモ 最長29時間6分(3G。4G/5Gは12時間11分) 音声約460万人/データ830万人以上(推計) IoT機器の位置登録信号が集中し、ネットワークが輻輳
2018年12月 ソフトバンク 4時間25分 全国(約3,060万回線) エリクソン製LTE交換機ソフトの証明書期限処理不具合

楽天モバイルでは2026年7月21日午後11時52分頃から翌22日午前0時45分頃まで、全国の一部利用者で音声通話・データ通信が利用できない、または利用しづらい障害が発生した。公式発表は原因を設備故障としているが、法令上の「重大な事故」への該当有無は記載していない。

4事例で公表された原因

4件の原因は同じではない。ここでの分類は、各社が公表した事実を読みやすく並べたもので、全障害の原因分布を示すものではない。

ソフトウェア・設定起因

KDDIの2022年障害は、メンテナンス中のルータ経路設定の誤りによる通信断を起点に、位置登録の再送増加とVoLTE交換機・加入者データベースの輻輳へ波及した。ソフトバンクの2018年障害は、エリクソン製LTE交換機ソフトウェアがデジタル証明書の有効期限を誤って処理したことが原因と公表されている。

輻輳(ふくそう)の連鎖

ドコモの2021年障害は、設備工事後にIoT端末から位置登録信号が集中して輻輳が発生した事例。ドコモは重大事故報告後、利用者影響を考慮した工事計画・方法と、利用者への案内方法を見直すと公表した。

外的要因(災害・ケーブル切断)

地震・台風などでは、複数社が同じ地域で停電や伝送路の影響を受けることがある。この場合、異なるMNOを組み合わせても両方が使えない可能性があり、デュアルSIMだけで災害対策が完結するわけではない。

総務省の重大事故報告制度

電気通信事業法では、一定規模以上の通信障害を「重大な事故」として総務省への報告を義務づけている。基準は役務の種類ごとに異なる。電気通信事業法施行規則第58条第2項の主な例は:

  • ・緊急通報を扱う音声役務は、影響利用者数が3万人以上かつ1時間以上
  • ・緊急通報を扱わない音声役務は、3万人以上かつ2時間以上、または10万人以上かつ1時間以上
  • ・データ通信などその他の役務にも、役務・影響範囲に応じた別の基準がある

重大事故の基準に達しない中小規模の障害でも、事業者の障害情報に掲載される場合はある。ただし重大事故としての件数には含まれず、小規模障害を横断比較できる統一統計もない。

重大事故の件数だけでは、報告基準未満の障害を含む発生頻度は分からない。一方、基準未満の障害を同じ条件で集計した公式の横断統計も確認できないため、公開情報だけで客観的な順位を作るのは難しい。

公表資料で確認できる事実と対策

NTTドコモ

2021年10月14日の障害について重大事故報告書を総務省へ提出。ドコモは、利用者影響を考慮した工事計画・方法の検討と、迅速・正確に情報を提供するためのお知らせ方法の見直しを公表した。

この報告は1事例への対策を示すもの。現在の障害頻度、他社より早く復旧するか、ネットワーク投資や冗長性の順位までは示していない。

→ ドコモの速度を調べた記事

au(KDDI)

KDDIの2022年7月29日公表資料では、2022年7月の障害の影響時間は61時間25分で、KDDI単体の音声は約2,278万人、データ通信は765万人以上に影響したと推計されている。両者の重複有無は同資料から確認できない。メンテナンス中のルーティング設定ミスがVoLTE交換機に波及し、総務省の行政指導を受けて再発防止策が講じられた。

KDDIは、作業手順の見直し、VoLTE交換機の負荷を抑える制御、復旧手順の改善などを公表した。対策内容は確認できるが、公表された1事例だけから現在や将来の障害発生率が他社より高い・低いとは判断できない。

→ auの速度を調べた記事

ソフトバンク

2018年12月6日の障害は13時39分から18時04分までの4時間25分で、ソフトバンクは全国の対象サービス約3,060万回線に影響したと説明している。原因はエリクソン製LTE交換機ソフトウェアによるデジタル証明書の期限処理不具合で、エリクソンも複数国の顧客設備への影響を公表した。

ソフトバンクは証明書の総点検、旧ソフトウェアで緊急起動する手順の短縮、LTE交換機の追加・マルチベンダー化などを公表した。この記事は各社1件の抜粋なので、これをもって近年の重大障害件数が4社で最少とは評価しない。

→ ソフトバンクの速度を調べた記事

楽天モバイル

2026年7月21日夜から翌22日未明には、全国の一部利用者で約53分間、音声通話・データ通信が利用できない、または利用しづらい障害が発生した。楽天モバイルは設備故障が原因で、同日午前0時45分頃に復旧したと発表している。

公式の障害票は影響人数を示しておらず、法令上の「重大な事故」への該当有無も記載していない。この1件から障害頻度、ネットワークの成熟度、災害時の対応力を他社と比較することはできない。

→ 楽天モバイルの速度を調べた記事

通信障害に備えるには

公開資料だけで「障害が起きないキャリア」を選ぶことはできない。備えは一つに頼らず、別回線、Wi-Fi以外の連絡手段、公式情報の確認方法を組み合わせる。

デュアルSIM / サブ回線を持つ

異なるMNOの回線を2つ持つと、単一の携帯網だけに依存する状態を減らせる。MVNOやオンライン専用プランも、どのMNO網を使うかを契約前に確認する。同じMNO網を使う2回線は、障害箇所によって同時に影響を受ける可能性がある。

分散を目的にする場合の考え方:

  • ・主回線と副回線で異なるMNO網を選ぶ
  • ・端末がデュアルSIM、利用する周波数、音声通話・緊急通報に対応するか確認する
  • ・平時に回線切り替えと発着信を試し、契約の有効期限や維持条件も確認する

異なるMNOでも、広域災害、停電、端末故障、共通の伝送設備などが原因なら両方使えない場合がある。デュアルSIMは可用性を保証するものではない。

Wi-Fiスポットの把握

自宅や職場の固定回線Wi-Fiが携帯網と別経路なら代替になる場合がある。ただし停電や固定網の障害ではWi-Fiも止まり得るため、使える場所だけでなく電源や回線の種類も確認しておく。

障害情報の確認手段

平時に各社の公式障害ページをブックマークし、モバイル回線が使えないときの確認手段も決めておく:

  • ・サブ回線(デュアルSIM)で確認
  • ・固定回線や別MNOの回線から公式障害ページを確認
  • ・テレビ・ラジオ(大規模障害はニュースで報じられる)

緊急連絡手段の確保

携帯電話以外の連絡先と手段も記録しておく。固定電話・公衆電話、家族の集合場所、ラジオなどを候補にし、災害時に通信各社が公衆Wi-Fi「00000JAPAN」を開放した場合は公式案内と利用上の注意を確認する。

対応端末では、地上回線とWi-Fiが届かない見通しのよい屋外から衛星へ直接つながるサービスも選択肢になる。ただし利用できる機能や緊急通報の扱いはキャリアごとに異なる。条件は衛星通信の4社比較で整理した。

JAPANローミング(2026年4月1日開始)

2026年4月1日から、NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯5社が共同で「JAPANローミング」を開始した。大規模災害や大規模障害時に5社が協議し、提供地域・期間・方式を決めた場合、他社の4G LTE回線へ一時的に接続して一部通信を利用できる仕組み。

2つのモードがある:

  • ・緊急通報のみ方式 — 原則としてネットワークを手動選択し、110・118・119への発信のみ利用可能。緊急通報機関からの折り返し、一般通話、SMS、データ通信は利用できない
  • ・フルローミング方式 — 対応端末は原則自動接続。利用できる機能は契約先によって異なり、音声通話・SMSに加えて最大300kbpsのデータ通信を案内する事業者がある一方、データ通信を提供しない事業者もある

申込み・料金条件、対応端末、利用できる機能は契約先ごとに確認が必要。2026年8月12日時点では、mineo・IIJmio・日本通信SIMはフル方式でも音声通話(緊急通報を含む)・SMSのみで、データ通信は利用できないと案内している。既存端末がすべて対応しているわけでもない。

2026年7月11〜12日の台風9号による沖縄県内のドコモ・KDDIの障害では、フルローミング方式が実際に提供された。すべての状況で使える保証はなく、対応端末や提供方式にも制約があるため、デュアルSIMなど他の備えと組み合わせて考えたい。

2026年8月12日、携帯5社の共同発表とmineo・IIJmio・日本通信SIMの公式案内で提供条件・機能を再確認。

この資料から言えること・言えないこと

JAPANローミングは2026年7月の台風9号で、沖縄県内の公式案内対象地域にフル方式が提供された実績がある。すべての地域・障害で自動的に使えるわけではなく、提供判断、方式、対象端末、契約先ごとの機能が異なる。

4社の公式資料から、選定した障害の原因、影響、当時公表された対策は確認できる。一方、重大事故未満を含む全障害の統一集計がないため、現在の発生頻度や将来の起こりやすさを順位付けすることはできない。

重大事故の報告基準は、緊急通報を扱う音声役務を含めて役務別に定められている。制度上の重大事故件数と各社が公開する障害情報は対象範囲が異なるため、障害傾向を見るときは両方を分けて確認する必要がある。

契約判断では、順位を推測するより、自分の生活圏のエリア、利用条件、公式障害情報と復旧報を確認する。備えは異MNOの回線、固定回線、公衆電話などを組み合わせ、どれか一つを「必ず使える」とみなさない。

公開投稿の扱い

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調査メモ / LIMITATIONS
一次資料で確認できるのは、発生した事例の範囲・原因・対策まで。「どの社が次に止まりやすいか」は分からない。契約先の順位付けより、異なるMNOの回線、Wi-Fi以外の連絡手段、公式障害ページを平時に確認しておくほうが実務的。

参照先(調査日: 2026年8月12日)