ドコモは通信品質を改善したのか? — 2026年現在の状況を調べてみた

30秒で読む要点

  • 外部調査の評価は割れている。Opensignal(2025年4月版)ではauが17部門中11部門で首位、ドコモは3部門で単独首位にとどまった。一方J.D.パワーではドコモがトップ評価。「改善したか」は測定指標によって結論が変わる状態
  • 時間帯別では、昼12〜13時の安定性は4社中トップ水準を維持している。一方で夜20〜23時の落ち込みはau・ソフトバンクと同程度で、この時間帯でのドコモ優位は確認できなかった。改善効果が時間帯によって偏っている可能性がある
  • 設備投資、基地局増設、Massive MIMO、移動基地局など複数の対策が進んだ。イベント会場の個別測定を、5G SA単独の効果や日常利用の全面改善の証明としては扱わない
  • FOMA 3G終了(2026年3月31日)後の帯域再利用は確認が必要。混雑改善はSA構成だけで決まらず、無線帯域、基地局、アンテナ、伝送、コア、利用者集中の総合条件に左右される
  • 留保: 地域・時間帯・端末・通信方式によって体験は大きく異なる。5G SA対応や表示の有無だけで、一概に「改善した/していない」とは言い切れない
個人の調査メモです。追跡できる公開情報を条件付きの傾向として整理しています。 通信品質は端末・場所・時期で変わるため、契約前には各社の公式情報もご確認ください。

この調査で確認したこと

部分訂正(2026年9月11日): 5G SAだけで同時接続容量が大幅に増え、混雑を本質的に解消するとした記載を訂正した。イベント時の数値も同条件のNSA/SA比較として追跡できないため撤去した。SAと無線容量の違いはNSAとSAの比較記事に整理している。

2023年、「ドコモ パケ詰まり」がSNSで大きな話題になった。渋谷・新宿・池袋でアンテナが立っているのに繋がらない——あれから約2年半。ドコモは300億円規模の設備投資を行い、「ネットワーク品質の取組み宣言」を出して改善に動いた。2026年4月時点の公開情報を整理した。

圏内なのに通信できない場合の原因と確認手順は「パケ詰まりとは?圏内なのに通信できない原因と確認手順」にまとめている。ここではドコモに絞って「改善の経過と現状」を追う。

ドコモの「パケ詰まり」問題とは

2023年、ドコモの都市部で「アンテナは立っているのにデータが流れない」という報告がSNSで急増した。渋谷スクランブル交差点、新宿駅周辺、池袋サンシャイン付近——ターミナル駅や繁華街を中心にパケ詰まりの報告が相次ぎ、メディアでも取り上げられる社会問題になった。

特に話題になったのは「隣のau/ソフトバンク使いは普通に使えているのに、自分のドコモだけ繋がらない」という状況の可視化。同じ場所でキャリア間の差が目に見えることで、問題が一気に認知された。

背景にはドコモのユーザー数の多さがある。契約者数で国内最多のドコモは、同じ基地局に接続するユーザー数が他社より多くなりやすい。ユーザー密度が高い環境では構造的にパケ詰まりが起きやすく、「ドコモだから詰まる」のではなく「ドコモはユーザーが多いから詰まりやすい」という面がある。

ドコモが行った対策

設備投資の大幅増額

ドコモは2025年度の設備投資を前年度比で大幅に増額。第3四半期累計で5,658億円(前年同期比+1,327億円、+30.6%)を投入した。2025年度下期は上期の3倍のペースで5G基地局を構築する計画を進め、主要都市中心部の受信速度は2024年3月比で25%向上、全国主要鉄道動線で40%向上したと発表している。

5G SA・Massive MIMO・スモールセルの投入

5G SA(スタンドアローン)は4Gコアネットワークに依存しない構成で、低遅延、多数端末向け機能、ネットワークスライシングなどの基盤になる。実効速度や混雑耐性はSA構成だけでは決まらず、周波数幅、無線設備、アンテナ、バックホール、コア、利用者集中にも左右される。ドコモの案内するNR-DCの最大速度も理論上の提供条件で、個々の場所の実効速度を保証するものではない。

Massive MIMO(大規模アンテナ)搭載基地局は2026年3月末までに全国で3.0倍にする目標を掲げた。2025年6月からはHPUE技術を全国5G基地局に導入し、10月末に全国展開を完了している。

FOMA 3G終了による帯域再利用

2026年3月31日にFOMA(3G)とiモードが完全終了した。3Gで使用していた周波数帯を4G/5Gに転用することで、通信キャパシティの増加が期待される。ただし、具体的にどの帯域がどれだけ転用されたかの公式な詳細発表は確認できていない。終了からまだ日が浅く、効果が体感に表れるにはもう少し時間がかかる可能性がある。

イベント対策の強化

年間250件以上のイベント対策を目標に掲げ、Massive MIMO搭載の移動基地局車を投入している。イベント対策は移動基地局、アンテナ、周波数、運用調整などの組み合わせであり、公開されている個別測定だけから5G SA単独の効果を切り分けることはできない。

2026年現在の速度データ

みんなのネット回線速度の集計傾向やOpensignal等の外部調査を眺めた印象をまとめる。以下は数値で断言するものではなく、調査データを見た感触としての記録。

時間帯 ドコモの印象 他3社との比較感
朝(7〜9時) 速め 4社とも安定。ドコモは上位水準
昼(12〜13時) やや速め 4社中もっとも落ち込みが小さい印象。MNOの昼は全社安定
夕方(17〜19時) 普通 帰宅ラッシュ帯で混む。auと同程度の印象
夜(20〜23時) 遅め ドコモの弱点時間帯。au・ソフトバンクと同程度の落ち込み
深夜(0〜6時) 速い 4社トップ水準。深夜帯は全社速い

昼帯の安定性は2023年時点から継続してドコモの強み。一方、夜間(20〜23時)の落ち込みは目立ち、この時間帯に限っては「他社と大きな差はない」というのが調べた範囲での印象だった。

→ ドコモの速度・エリアを公式情報で再検証した記事 | MNO大手4社の速度を比べた記事

外部調査の評価

Opensignal(2025年4月版、調査期間2025年1〜3月)ではauが17部門中11部門で首位と圧倒。ドコモは5Gダウンロード速度(168.0Mbps)と5Gカバレッジ体験で首位を取ったが、信頼性(Reliability)はauが首位だった。一方で地方のモバイル品質ではドコモがカバレッジ体験9.1/10で首位となっており、地方での強さは健在。

J.D.パワーの顧客満足度調査ではドコモがトップ評価を維持。「通信品質マニフェスト」34項目も全達成を発表している。ただし日経xTECHは「達成容易な目標設定ではなかったか」と指摘しており、自社評価と第三者評価の間に乖離がある。

口コミから見える変化

2023年のピーク時と比べると、Xやレビューサイト上の「ドコモ パケ詰まり」に関するトーンは変化している。2023年は「全然繋がらない」「キャリア変えたい」といった強い不満が目立ったが、2025年以降は「以前よりは良くなった」「まだ不十分だが改善は感じる」といった声が増えた印象がある。

イベント会場とターミナル駅周辺では、移動基地局車や基地局増設など複数の対策が行われている。公開投稿で改善を感じた例があっても、全国の日常利用や5G SA単独の効果を証明するものではない。

一方で「まだ不十分」と感じるのは夜間帯の都市部と4G/5Gハンドオーバー。夜20時台の動画視聴でバッファリングする、移動中に5Gと4Gが切り替わる瞬間に途切れるといった声は2026年時点でも残っている。

X上のパケ詰まり投稿数に関する調査(mobilelaby、2025年6〜7月)では、ドコモの投稿がau・ソフトバンクの3倍以上という結果が報告されている。ただしドコモはユーザー数が最多であり、投稿の絶対数がそのまま品質の指標にはならない点には注意が必要。

まだ残る課題

夜間帯(20〜23時)の速度低下

夜間の速度低下はMNO4社共通の傾向だが、ドコモの夜間帯はユーザー数の多さもあって落ち込みが目立つ。設備投資の効果がまず現れやすいのはイベント対策や基地局数の増強であり、夜間の日常利用の改善はやや後回しになっている可能性がある。

4G/5Gハンドオーバーの不安定さ

移動中の一時的な通信停止には、基地局間・通信方式間の切り替え、電波品質、混雑など複数の原因がありうる。5G SAエリアの拡大だけでハンドオーバー頻度が減るとは限らず、利用者側から原因を断定することは難しい。

5G SAエリアの限定性

5G SAの利用には、ドコモが案内する対象料金プラン、対応端末、設定、提供エリアなどの条件がある。ただしSA表示は、その場所の空き容量や実効速度を示すものではない。利用可否は公式条件とエリアを確認し、混雑の改善度とは分けて考える必要がある。

FOMA終了の効果は「まだ分からない」

2026年3月31日のFOMA完全終了で帯域再利用が始まったが、終了からまだ日が浅く、体感レベルでの変化報告は少ない。理論上はキャパシティの増加に寄与するが、実際にどの程度の帯域が4G/5Gに転用されたかの公式な詳細は確認できていない。効果が見えるのはこれからだろう。

2026年度の投資額削減

ドコモは2026年度のネットワーク投資を2025年度比で約300億円削減する計画を示している。2025年度の集中投資が一定の成果を上げたことで「積極投資フェーズ」から「維持フェーズ」に移行しつつあるとも読めるが、削減がユーザー体験に影響するかは注視が必要。

→ ドコモのイベント対策を公式情報で確認する記事 | パケ詰まりの仕組みを整理した記事

公開投稿の扱い

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調査メモ / LIMITATIONS
ドコモは基地局増設、Massive MIMO、移動基地局、伝送・コア側を含む品質対策を進めている。ただし、異なる場所・端末・時刻の測定や公開投稿から全国一律の改善度を決めることはできない。5G SAは新機能の基盤だが、SA単独を混雑改善の原因とは扱わない。

参照先(調査日: 2026年4月3日)