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パケ詰まりが起きやすいキャリア・状況を調べてみた

※ 個人の調査メモです。公的機関ではありません。
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。

調べたこと

「アンテナは立っているのに全然繋がらない」——いわゆるパケ詰まりについて、キャリア別の傾向と起きやすい状況を調べた。

イベント時の混雑全般については「イベント・人混みで繋がらない問題を調べてみた」にまとめている。ここではパケ詰まりという現象そのものに焦点を当てて整理した。

パケ詰まりとは何か

パケ詰まりは、電波は届いているのにデータが流れない状態を指す俗称。スマホのアンテナは4本立っている、Wi-Fiには繋がっていない、なのにブラウザが開かない・画像が送れない——という症状。

原因は基地局側の処理能力オーバー。1つの基地局が同時に処理できるデータ量には上限があり、その上限を超えると「電波はあるのにデータが渋滞する」状態になる。高速道路の渋滞と似ていて、道路(電波)は存在するが車(データ)が多すぎて流れない。

Speed testを走らせると、電波強度は十分なのに実効速度が1Mbps以下になるといったことが起きる。ダウンロード速度よりもアップロード速度が先に詰まる傾向があり、写真や動画の送信が特に影響を受けやすい。

MNOの「パケ詰まり」とMVNOの「遅い」は別物

MVNOユーザーが昼に経験する「遅い」をパケ詰まりと呼ぶことがあるが、厳密には機序が異なる

MNOのパケ詰まり MVNOの昼帯低速
ボトルネック 基地局の同時接続処理 POI(相互接続点)の帯域
発生しやすい状況 イベント・駅・繁華街など人が密集する場所 昼12〜13時の全国一律
影響範囲 特定の基地局周辺のみ そのMVNOの全ユーザー
同じ場所のMNOユーザー 同じキャリアなら同様に影響 MNOユーザーは影響なし
解消方法 人が減る / 基地局増設 / 5G SA MVNO側のPOI増速

MVNOの昼帯低速については「昼に速度が落ちるのはどこか調べてみた」で詳しく整理している。以下ではMNOの基地局起因のパケ詰まりを中心に扱う。

キャリア別の傾向

NTTドコモ — 2023年問題と改善の過程

2023年にドコモの都市部パケ詰まりが社会的に大きく報じられた。渋谷・新宿・池袋などターミナル駅周辺で「アンテナは立っているのに繋がらない」報告が急増し、ドコモ自身が「ネットワーク品質の取組み宣言」を出す事態に至った。

これを受けてドコモは300億円規模のネットワーク品質改善投資を実施。基地局のキャパシティ増強、トラフィック分散、5G基地局の前倒し整備を進めた。2024年以降「以前より改善された」という声が出始めている一方、完全解消にはなっていないという報告も混在している。

2025年度は全国250件以上のイベント対策を目標に掲げており、Massive MIMO搭載の移動基地局も投入している。改善は進んでいるが、ユーザー数が最も多いキャリアである以上、混雑環境では他社より不利になりやすい構造的な面がある。

ドコモの速度を調べた記事ドコモの品質改善を詳しく調べた記事

au(KDDI)— 5G展開の先行で相対的に安定

auは5G基地局の展開が4社のなかで比較的早く、都市部でのパケ詰まり報告はドコモほど目立たない傾向がある。ただしこれは「報告が少ない」だけで「発生しない」わけではない。コミケや花火大会など極端な密集環境ではauでもパケ詰まりは起きる。

なお、2022年7月のau大規模通信障害(約86時間、3,091万人影響)はパケ詰まりとは別の問題(VoLTEサーバーの輻輳)。パケ詰まりは基地局側の無線区間の話だが、2022年障害はコアネットワーク側の問題で、性質が異なる。

auの速度を調べた記事

ソフトバンク — 5G SA+Massive MIMOで対策中

ソフトバンクは2024年4月に5G SAの商用サービスを開始。5G SAは基地局の同時接続処理能力が4Gより大幅に向上するため、パケ詰まりの根本的な改善策になりうる。ただし対応エリアは都市部の一部にとどまっており、恩恵を受けられるユーザーはまだ限定的。

通勤ラッシュ時の電車内(山手線等)でパケ詰まりが報告されている。4Gと5Gの切り替え(ハンドオーバー)が頻繁に起きる走行中の車内は、パケ詰まりが発生しやすい環境の一つ。

ソフトバンクの速度を調べた記事

楽天モバイル — ユーザー密度の低さが有利に働く場面

楽天モバイルは契約者数が大手3社より少ないため、混雑環境で「自分だけ繋がった」という報告が散見される。花火大会やコミケなどで、ドコモ・auが詰まっているなかで楽天モバイルが通ったという声がある。

ただしこれは基地局の処理能力が高いのではなく、単にユーザーが少ないため。Band 3(1.7GHz)が主力帯域であり、帯域幅自体のキャパシティは大手3社より小さい。今後の契約者増加や、プラチナバンド(Band 28)への対応端末普及によって状況は変わりうる。

楽天モバイルの速度を調べた記事

MVNO(IIJmio・mineo等)— 「パケ詰まり」ではなくPOI制約

MVNOの昼帯低速を「パケ詰まり」と表現するユーザーは多いが、上述のとおり機序が異なる。MVNOの場合は基地局ではなく、MNOとの相互接続点(POI)の帯域がボトルネックになる。MVNOは借りている帯域の範囲内でしか通信できないため、利用者が集中する昼12〜13時に速度が落ちる。

ただし、イベント時のパケ詰まりはMVNOにも波及する。MNO側の基地局が詰まれば、そこに接続しているMVNOユーザーも同様に影響を受ける。花火大会でmineoが繋がらないのはPOI制約ではなく、MNO基地局側のパケ詰まりが原因であることが多い。

昼に速度が落ちるのはどこか調べてみた

パケ詰まりが起きやすい状況

大型イベント・フェス・花火大会

数万〜数十万人が一箇所に集中するイベントは、パケ詰まりが最も起きやすい環境。特に全員が同時にカメラを使う花火大会はアップロード帯域がパンクしやすい。詳しくはイベント混雑の記事および花火大会の記事を参照。

通勤ラッシュ(ターミナル駅・電車内)

朝8〜9時台と夕方17〜19時台のターミナル駅周辺は、イベント並みの人口密度になる。新宿駅は1日の乗降客数が約350万人であり、朝のピーク時には1つの基地局カバー範囲に数千人が集中する。走行中の電車内ではハンドオーバー(基地局の切り替え)が頻繁に起き、切り替え中に一時的に通信が途切れる症状もパケ詰まりと混同されやすい。

都市部の密集スポット(渋谷・梅田・栄など)

渋谷スクランブル交差点、大阪・梅田のヨドバシ周辺、名古屋・栄の繁華街などは、平日昼間でもパケ詰まりが報告されることがある。ドコモの2023年問題はまさにこれらの都市部密集スポットで顕在化した。

競技場・アリーナ・コンサート会場

東京ドーム(約5.5万人)、日産スタジアム(約7.2万人)などの大規模会場では、常設のDAS(分散アンテナシステム)が設置されていることが多いが、それでも試合開始直前やハーフタイムに通信が集中してパケ詰まりが起きることがある。

パケ詰まりの見分け方と対処

「遅い」と感じたとき、それがパケ詰まりなのか、電波が弱いのか、端末の問題なのかを切り分けるのは重要。

  • アンテナ本数を確認 — アンテナ3〜4本で遅い場合はパケ詰まりの可能性が高い。1〜2本なら電波が弱い(エリアの問題)
  • 場所を移動してみる — 数十メートル移動すると別の基地局に接続され、改善することがある。混雑していない基地局を掴めれば解消する
  • 機内モードのON/OFF — 一度機内モードにして数秒待ってからOFFにすると、別の基地局に再接続されることがある。パケ詰まり時の即席の対処法
  • Wi-Fiへのオフロード — 近くにフリーWi-Fiがあればそちらを使う。パケ詰まりはモバイル回線の問題なのでWi-Fiには影響しない
  • 5G端末なら5Gエリアを探す — 5G(特にSA)は同時接続処理能力が4Gより高い。5Gのピクトが表示されるエリアに移動できれば改善する可能性がある
  • 時間をずらす — パケ詰まりは一時的な現象。15〜30分ずらすだけで解消することが多い。昼休みの開始直後(12:00〜12:15)が最も混雑し、12:30以降に緩和される傾向

今後の見通し

パケ詰まりの根本的な解消策は5G SA(スタンドアロン)の普及にかかっている。5G SAは4Gと比べて同時接続数が飛躍的に増え、ネットワークスライシングによる帯域制御も可能になる。ドコモ・au・ソフトバンクはいずれも5G SAの展開を進めているが、2026年時点では対応エリアは都市部の一部にとどまっている。

もう一つの方向は基地局の高密度化(スモールセル)。ターミナル駅や繁華街にスモールセルを多数設置することで、1つの基地局あたりの負荷を分散する。ただしこれには設置場所(ビルオーナーとの交渉)と電源確保のコストがかかり、一朝一夕には進まない。

ユーザー数の増加とデータ使用量の増加は続いているため、設備投資が追いつかなければパケ詰まりは再び顕在化する。「改善と悪化のいたちごっこ」がしばらく続く構造と見ておくのが現実的。

口コミから拾ったもの

価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。

「渋谷のスクランブル交差点付近で、ドコモが全く通信できなくなった(2023年秋頃)。アンテナ4本なのにブラウザが真っ白。隣にいたau使いの同僚は普通に使えていた。これがパケ詰まりかと思った」
X(旧Twitter)(2023年10月)
「mineoのAプラン(au回線)で昼12時台にパケ詰まりのような状態になる。アンテナは立っているが、画像の読み込みが永遠に終わらない。MVNOだから仕方ないとは思うが」
価格.com クチコミ(2024年)
「auで2024年のコミケ(C104)に行ったが、東ホールは比較的繋がった。西ホールは完全にパケ詰まり状態。同じ会場でもホールによって全然違う」
X(旧Twitter)(2024年8月)
「ドコモのパケ詰まりが2024年になって明らかに改善された。新宿駅の朝ラッシュで以前は全然ダメだったのが、普通に使えるようになった。設備投資が効いているのかも」
個人ブログ(2024年6月)
「楽天モバイルで花火大会に行ったら意外と繋がった。周りのドコモ・au勢が苦しんでいるなかで自分だけ普通にLINE送れた。ユーザーが少ないからだと思う」
X(旧Twitter)(2024年7月)
「ソフトバンクで朝の通勤電車内(山手線)がパケ詰まり状態になることがある。駅に停車中は繋がるが、走行中にまた詰まる。5Gに切り替わる瞬間が特に不安定」
X(旧Twitter)(2025年1月)
「IIJmioで昼に遅いのはパケ詰まりだと思っていたが、調べたらMVNOの遅さは基地局の問題じゃなくてPOI(相互接続点)の帯域制限らしい。パケ詰まりとは別物だった」
個人ブログ(2024年)
「5G SA対応エリア(ドコモ)に入った途端にパケ詰まりが解消される体験をした。梅田の地上で4Gだと詰まっていたのが、5G SAに切り替わった瞬間にサクサクになった」
X(旧Twitter)(2025年2月)

まとめ

  • 「パケ詰まり」はMNOとMVNOで機序がまったく異なる。MNOは基地局の同時接続処理が追いつかない状態、MVNOはPOI(相互接続点)の帯域不足。見た目は似ているが原因が違うため、対処法も異なる
  • MNO4社のなかでは、ドコモが2023年に都市部のパケ詰まりで社会的に注目を浴び、300億円規模の設備投資で改善に取り組んでいる。2024年以降「以前より良くなった」という声がある一方、完全解消には至っていないという報告も混在している
  • auは5G基地局数の多さもあり都市部でのパケ詰まり報告が相対的に少ない傾向。ただしイベント会場など極端な密集環境では4社とも同様に発生する。ソフトバンクは5G SA+Massive MIMO投入で対策を進めている段階
  • 楽天モバイルはユーザー密度の低さが混雑環境で有利に働く場面がある。ただしこれは基地局投資の厚さではなく単にユーザーが少ないことによるもので、今後の契約者増加で状況は変わりうる
  • パケ詰まりは場所・時間・イベントの有無で発生状況が大きく変わり、「このキャリアなら安全」とは言い切れない。5G SA対応エリアの拡大が根本的な改善策になりつつあるが、対応エリアは都市部の一部にとどまっている
MEMO
パケ詰まりは「電波の問題」ではなく「処理能力の問題」。アンテナが立っているのに繋がらないのはそのため。MVNOの昼の遅さを「パケ詰まり」と呼ぶ人もいるが、厳密には別の現象(POI帯域不足)。ここでは両方を整理したが、混同しやすい点は注意。