楽天モバイルのプラチナバンド — 繋がりやすさは変わったか調べてみた

30秒で読む要点

  • プラチナバンド基地局の展開は計画を大幅に下回っている。認定時の計画は令和15年度末までに10,661局だが、2025年度の実績は250局程度との報道がある。初期は数百局ペースで推移し、後半に加速するシナリオのようだが、現時点では都市部の限られたエリアにとどまる
  • 効果が出ているのは「繋がらなかった場所で繋がるようになった」という接続改善であり、速度向上ではない。帯域幅が3MHz×2と狭く(他3社は10〜15MHz)、理論最大速度も約30Mbps。キャリアアグリゲーションも非対応で、速度面では構造的にハンデがある
  • アンケート調査では満足度が3.33→3.49に微増(マイナビニュース、465人調査)。改善を感じたユーザーは18.7%、悪化を感じたのは4%。地下鉄駅間・屋内奥まった場所での改善報告が目立つ一方、地方・郊外ではエリア外のため変化を感じないという声が多い
  • 楽天モバイルは2026年8月12日、自社網でのカバーに時間を要するエリアではKDDIローミングを10月以降も継続し、十分カバーできているエリアでは縮小すると発表した。契約はKDDIと詰めの協議中で、具体的な対象地域はこの発表では示されていない
  • 留保: プラチナバンドの本格的な効果が出るのはこれから。基地局展開が計画通りに加速すれば状況は大きく変わる可能性がある。また楽天モバイルはAST SpaceMobileとの衛星直接通信を2026年内に提供予定としており、地方の圏外解消はプラチナバンドとは別の手段でも進む可能性がある
個人の調査メモです。追跡できる公開情報を条件付きの傾向として整理しています。 通信品質は端末・場所・時期で変わるため、契約前には各社の公式情報もご確認ください。

この調査で確認したこと

2023年10月、楽天モバイルは念願のプラチナバンド(700MHz帯)の認可を取得した。2024年6月に商用サービスを開始し、2026年4月で約1年10ヶ月が経過。「繋がりにくい」と言われ続けた楽天モバイルの弱点は解消されたのか。展開状況・口コミ・構造的な課題を調べた。

楽天モバイル全体の速度・体感は「楽天モバイルの速度・体感を調べてみた」にまとめている。ここではプラチナバンドに絞って「何が変わったか、何が変わっていないか」を追う。

プラチナバンドとは

プラチナバンドとは、700〜900MHz帯の低い周波数帯のこと。電波が建物を回り込み、壁やコンクリートを透過しやすい特性がある。地下・屋内・ビルの谷間など、高い周波数帯では届きにくい場所でも電波が届きやすくなる。

ドコモ・au・ソフトバンクの3社は長年プラチナバンドを保有しており、建物内・地下での「繋がりやすさ」の土台になっている。楽天モバイルは2020年の本格参入以来、主力の1.7GHz帯(Band 3)だけで戦ってきた。1.7GHz帯は速度は出るが建物貫通力が弱く、「外では速いのに屋内で圏外」という弱点がずっと指摘されてきた。

2023年10月、総務省から700MHz帯(Band 28)の割当を受け、2024年6月27日に東京都内で商用サービスを開始。楽天モバイルとしてはMNO参入から4年越しのプラチナバンド取得だった。

展開状況(2026年4月現在)

楽天モバイルのプラチナバンド展開は、計画と実績の間に大きな乖離がある。

項目 内容
認可 2023年10月(総務省、700MHz帯 3MHz×2)
商用開始 2024年6月27日(東京都世田谷区から)
計画基地局数 令和15年度末までに10,661局(人口カバー率83.2%目標)
2025年度実績 250局程度との報道(ダイヤモンド・オンライン)
帯域幅 3MHz×2(他3社は10〜15MHz×2)
展開方針 都市部のすき間(ビル間・地下)を優先。地方は衛星通信との組み合わせ

商用開始当初は東京都世田谷区の1局からスタートし、2024年11月時点で「複数局を運用中」と発表された。2025年度末の実績は250局程度とされ、10,661局の最終目標に対して序盤のペースは非常に遅い。楽天モバイル側は「前半は数百局ペースで推移し、後半に加速する」としているが、計画との乖離は大きい。

背景には楽天グループ全体の財務状況がある。楽天モバイルは2025年度にEBITDA黒字化を達成したが、赤字圧縮のためのコスト削減が続いており、プラチナバンドの基地局投資にも影響しているとみられる。設備投資額は令和15年度末までに544億円の計画だが、投資の前倒しは難しい状況にある。

繋がりやすさの変化

改善が報告されている場面

プラチナバンドのエリア内では、これまで圏外だった場所で繋がるようになったという報告が出ている。特に多いのは以下の場面。

  • 地下鉄の駅間トンネル(東京メトロ・横浜市営地下鉄等)
  • オフィスビルの地下階・奥まったフロア
  • 大型商業施設のフードコート・奥の店舗
  • マンションの室内(特にコンクリート造の低層階)

マイナビニュースが実施した465人アンケートでは、プラチナバンド開始後に繋がりやすさの満足度が3.33→3.49に上昇。改善を感じたユーザーは18.7%で、悪化を感じたのは4%にとどまった。

変化を感じていない場面

一方で「変わらない」という声も多い。主な理由は以下の通り。

  • そもそもプラチナバンドのエリア外(250局程度ではカバレッジが限定的)
  • 端末がプラチナバンド(Band 28)に非対応
  • もともと1.7GHz帯で繋がっていた場所では変化を感じにくい
  • 地方・郊外はプラチナバンドの展開対象外(都市部優先のため)

プラチナバンドの効果は「今まで繋がらなかった場所で繋がるようになる」こと。もともと繋がっていた場所では体感しにくく、エリア外では当然効果がない。現時点での効果は「都市部の屋内・地下に限定的」という状態。

速度への影響

プラチナバンドで速度が上がるか——結論から言うと、速度向上はほぼ期待できない。

楽天モバイルに割り当てられた700MHz帯は3MHz×2という非常に狭い帯域幅。他3社のプラチナバンドが10〜15MHz幅であるのに対し、3分の1から5分の1の幅しかない。2レイヤーMIMO・256QAMを適用しても理論最大速度は下り約30Mbps。実測ではさらに低く、口コミでは地下で3〜10Mbps程度という報告が多い。

キャリア プラチナバンド帯域 帯域幅
NTTドコモ 700MHz / 800MHz / 900MHz 合計30MHz以上
au(KDDI) 700MHz / 800MHz 合計20MHz以上
ソフトバンク 700MHz / 900MHz 合計20MHz以上
楽天モバイル 700MHz 3MHz

さらに、3MHz幅ではキャリアアグリゲーション(CA)に対応できないため、他の帯域と束ねて速度を上げることもできない。楽天モバイル自身も700MHz帯を「速度向上ではなくエリア補完に使う」と明言しており、速度面での期待は最初から想定されていない。

つまりプラチナバンドの効果は「0Mbps(圏外)が3〜10Mbpsになる」ことであり、「50Mbpsが100Mbpsになる」ではない。この点は誤解されやすいが、繋がることと速いことは別の問題。

KDDIローミングとの関係

楽天モバイルのカバレッジを考える際は、KDDIとのローミング契約も確認が必要になる。KDDIが指定するローミング提供エリアでは、楽天回線が届かない場合にau回線(パートナーエリア)へ自動で切り替わる。提供状況は地域ごとに異なる。

KDDIの現行案内ではローミング提供期間は2026年9月30日までで、それ以後は両社協議としている。楽天モバイルは2026年8月12日、自社網でのカバーに時間を要するエリアでは10月以降もローミングを継続し、十分カバーできているエリアでは縮小すると発表した。契約はKDDIと詰めの協議中で、具体的な対象地域はこの発表では示されていない。

ローミングが縮小される地域では、次の条件を公式エリアマップと利用場所で個別に確認したい。

  • 楽天回線とパートナー回線のどちらが提供される地域か
  • 山間部・農村部など、日常的に使う場所が楽天回線エリア内か
  • 屋内・地下でプラチナバンドを利用できるか

したがって、2026年10月に全国一律で終了するとも、すべての地域で従来どおり継続するとも読めない。具体的な対象地域・期間は、両社の続報と公式エリア情報で確認する必要がある。

2026年8月14日、楽天モバイルの8月12日発表に基づき、10月以降は地域によりローミングを継続・縮小する方針へ訂正。

楽天モバイルの速度・体感を調べた記事地方・山間部で繋がりやすいキャリアを調べた記事

他社との構造的な差

プラチナバンドを「持っている」ことと「他社と同等に使える」ことは別の問題。楽天モバイルと他3社の間には以下の構造的な差がある。

帯域幅の差

他3社のプラチナバンドは複数の帯域を保有し合計20〜30MHz以上。楽天は3MHzのみ。同時接続数と速度の上限が根本的に異なる。混雑環境での収容力に差が出やすい。

展開歴の差

ドコモ・au・ソフトバンクは10年以上かけてプラチナバンドの基地局を全国に展開してきた。楽天は商用開始から2年足らずで250局程度。全国網羅には年単位の時間が必要。

メインバンドとの補完関係

他3社はプラチナバンドを「面でカバーする基盤」、中〜高周波数帯を「速度を出す手段」として使い分けている。楽天は1.7GHz帯がメインバンドで、プラチナバンドは「すき間を埋める補助」という位置づけ。役割が逆転しているわけではないが、基盤の厚みが違う。

衛星通信という別の手段

楽天モバイルはAST SpaceMobileとの衛星直接通信を2026年第4四半期に始める目標を示している。au・ソフトバンク・ドコモはすでにStarlinkを使ったスマートフォン直接通信を提供しており、楽天は音声・ビデオ通話を含むブロードバンド通信を目指す点が異なる。ただし、楽天の料金・対応端末・具体的な開始日などの商用条件はまだ発表されていない。提供状況と制約は衛星通信の4社比較にまとめた。

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調査メモ / LIMITATIONS
プラチナバンドは「楽天モバイルの弱点だった屋内・地下の繋がりにくさを解消する切り札」として期待されてきた。実際に都市部の一部では効果が出始めているが、展開ペースの遅さと帯域幅の狭さという構造的な制約がある。「プラチナバンドが来たから安心」ではなく「プラチナバンドは来たが、まだ始まったばかり」というのが2026年4月時点の印象。今後はKDDIローミングが地域ごとに継続・縮小される過程で、自社網の実際のカバー状況を確認する必要がある。

参照先(調査日: 2026年4月5日)