地下鉄・屋内で繋がらないキャリアを調べてみた
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。
調べたこと
地下鉄のトンネル内、地下街、オフィスビルの奥——「繋がらない」と感じやすい場所でのキャリア別の傾向を調べた。
プラチナバンド(低周波数帯)の保有状況と、地下鉄の共同インフラ整備状況から、なぜ差が出るのかを整理した。料金プランの話ではなく「地下・屋内で繋がるか」だけに絞っている。
なぜ地下・屋内で繋がりにくくなるのか
電波は周波数が低いほど障害物を回り込みやすく、壁やコンクリートを透過しやすい。700〜900MHzの「プラチナバンド」と呼ばれる帯域は波長が約30cmあり、建物内部や地下にも届きやすい。
一方、1.7GHz以上の高い周波数は直進性が強く、速度は出やすいが壁の向こう側には届きにくい。楽天モバイルのメイン周波数(1.7GHz・Band 3)が屋内で弱いと言われるのはこの物理的な特性による。
建物の構造も大きく影響する。鉄筋コンクリート(RC造)は電波を遮りやすく、特に築古の厚いコンクリート壁は全キャリアで弱くなる。ガラス窓は電波を通しやすいため「窓際なら入るが奥は厳しい」という現象が起きる。
プラチナバンドの保有状況
国内4キャリアのプラチナバンド割り当て状況を整理した。
| キャリア | プラチナバンド | Band番号 | 状況 |
|---|---|---|---|
| NTTドコモ | 800MHz | Band 19 | 長年運用・全国展開済み |
| au(KDDI) | 800MHz | Band 18 / 26 | 長年運用・全国展開済み |
| ソフトバンク | 900MHz | Band 8 | 全国展開済み |
| 楽天モバイル | 700MHz | Band 28 | 2024年6月開始・展開途上 |
ドコモ・au・ソフトバンクの3社は800〜900MHz帯を長年保有しており、地下・屋内向けの基地局整備も進んでいる。3社間で「プラチナバンドの有無」による差はほぼない。
楽天モバイルは2024年6月に700MHz帯(Band 28)の商用サービスを開始したが、当初は東京・世田谷区の1局のみだった。2026年3月期に全国10,661局を目標としているが、現時点で3社と同等のカバレッジには達していない。大半のエリアでは1.7GHz(Band 3)での接続が続いている。
地下鉄での繋がりやすさ
地下鉄の電波は、キャリアが個別に整備しているわけではない。JMCIA(移動通信基盤整備協会)という17社以上が参加する団体が、漏洩同軸ケーブル(LCX)や分散アンテナを使って共同で整備している。トンネル内にケーブルを敷設し、そこから電波を漏らす仕組み。
東京メトロ
駅ホームは4社ともほぼカバーされている。駅間トンネルも大部分で通信可能だが、楽天モバイルの一部区間で不安定になるという報告がある。副都心線や南北線など比較的新しい路線で特に差が出やすいとの声があった。
ドコモは2026年4月までに東京メトロ地下駅の60%以上で5G化を完了する計画を発表している。5G化が進めば地下でも高速通信が可能になるが、4社横並びで進むわけではなく、しばらくはキャリアによる差が出る可能性がある。
大阪メトロ
御堂筋線の心斎橋〜なんば間で、2023年12月に日本初のトンネル区間5G基地局シェアリングが開始された。地下トンネル内でも5G通信が可能になった先行事例。ドコモはSub6帯の5G基地局を1.4倍に増やし、Massive MIMOも導入している。
その他の地下鉄
名古屋市営地下鉄・福岡市地下鉄・札幌市営地下鉄なども同様にJMCIAの枠組みで整備されているが、東京・大阪と比べると情報が少ない。地方の新交通システムや私鉄の地下区間は整備が追いついていない箇所がある可能性がある。
建物内(オフィスビル・商業施設)での傾向
大型商業施設や主要オフィスビルにはDAS(分散アンテナシステム)が設置されていることが多く、建物内でも電波が届くようになっている。ただし全フロア・全エリアがカバーされているとは限らない。
地下フロア(B1〜B3)は特に電波が弱くなりやすい。飲食店が地下に入っている場合、席の位置によっては圏外に近くなることがある。地上階でも、建物の中心部や窓のないフロアでは弱くなりやすい。
高層階では別の問題がある。基地局のアンテナは通常、下向き〜水平方向に設置されているため、30階以上の高層階では電波が届きにくくなることがある。「窓際は入るが部屋の奥は弱い」という声は高層マンションや高層オフィスで多い。
築年数も影響する。築40年超のRC造(鉄筋コンクリート)マンションは壁が厚く、全キャリアで電波が減衰しやすい。新しい建物は電波透過性を考慮した設計がされていることもある。
楽天モバイルの地下・屋内事情
楽天モバイルが地下・屋内で弱いとされる理由は明確で、メインの周波数帯が1.7GHz(Band 3)だからだ。800〜900MHzのプラチナバンドを持つ他3社と比べて、物理的に建物透過性が低い。
2024年6月にプラチナバンド(700MHz・Band 28)の商用サービスを開始したが、展開ペースは緩やかだった。開始時は東京・世田谷区の1局のみ。2025年度に250局への拡大計画が報じられ、2026年3月期に10,661局を目標としている。
現時点では大半のユーザーが1.7GHz接続のままで、プラチナバンドの恩恵を実感できる場面は限られている。「プラチナバンド対応したと聞いて試したが変わらなかった」という声があるのはこのため。
地下鉄についても、ドコモ・au・ソフトバンクの3社と比べて整備が遅れている区間がある。主要駅のホームはカバーされつつあるが、駅間トンネルや地方の地下鉄では未整備の箇所が残っている。
MVNOは親回線と同じなのか
IIJmio・mineo・日本通信SIMなどのMVNOは、親回線のMNO(ドコモ・au・ソフトバンク)と同じ基地局・同じ周波数帯を使っている。つまり「電波の届く範囲」はMNOと完全に同一。
地下鉄でドコモの電波が入るなら、IIJmioのドコモ回線でも同じ場所で電波が入る。「MVNOだから地下で繋がらない」ということは原理上起きない。
ただし注意点がある。MVNOとMNOの違いは「電波の到達範囲」ではなく「混雑時の速度」。地下鉄の駅ホームのように多くの人が集中する場所では、電波は入るが速度が出ないことがある。MVNOはPOI帯域の制約があるため、こうした混雑の影響を受けやすい。
もうひとつ、SIMフリー端末やキャリア以外で購入した端末は、日本のプラチナバンドに対応していない場合がある。例えばBand 19(ドコモ800MHz)に対応していない海外端末でドコモ系MVNOを使うと、本来プラチナバンドで補えるはずの屋内カバレッジが欠けることになる。端末の対応バンドは事前に確認しておくほうがよい。
口コミから拾ったもの
価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。
まとめ
- ドコモ(800MHz)・au(800MHz)・ソフトバンク(900MHz)の3社はプラチナバンドを長年保有しており、地下・屋内でのカバレッジに大きな差はない。3社間の違いより「建物の構造」や「地下の深さ」のほうが体感に影響しやすい
- 楽天モバイルはメイン周波数が1.7GHz(Band 3)で建物透過性が低い。プラチナバンド(700MHz)は2024年6月に開始したが展開エリアは極めて限定的で、2026年3月時点でも大半の地下・屋内では恩恵を受けにくい状況
- 地下鉄の電波環境はJMCIA(移動通信基盤整備協会)が共同整備しており、駅ホームは4社とも概ねカバーされている。差が出るのは駅間トンネル内で、楽天モバイルの整備が遅れている区間がある
- MVNOは親回線のMNOと同じ基地局・周波数帯を使うため、電波の届く範囲は同一。地下・屋内で「MVNOだから繋がらない」ということはない。ただし混雑時の速度低下はMVNOのほうが大きい
- 高層階・地下深部・築古のコンクリート建物は全キャリアで電波が弱くなりやすい。キャリア選びよりも建物の構造が支配的な要因になるケースが多い
- ただし東京・大阪以外の地下鉄・地下街のカバレッジ情報は少なく、地方都市の地下環境は確認できていない部分が多い