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ドコモは通信品質を改善したのか? — 2026年現在の状況を調べてみた

※ 個人の調査メモです。公的機関ではありません。
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。

調べたこと

2023年、「ドコモ パケ詰まり」がSNSで大きな話題になった。渋谷・新宿・池袋でアンテナが立っているのに繋がらない——あれから約2年半。ドコモは300億円規模の設備投資を行い、「ネットワーク品質の取組み宣言」を出して改善に動いた。2026年4月現在、実際に改善されたのか。公開データと口コミから調べた。

パケ詰まりの仕組み・キャリア横断の傾向は「パケ詰まりが起きやすいキャリア・状況を調べてみた」にまとめている。ここではドコモに絞って「改善の経過と現状」を追う。

ドコモの「パケ詰まり」問題とは

2023年、ドコモの都市部で「アンテナは立っているのにデータが流れない」という報告がSNSで急増した。渋谷スクランブル交差点、新宿駅周辺、池袋サンシャイン付近——ターミナル駅や繁華街を中心にパケ詰まりの報告が相次ぎ、メディアでも取り上げられる社会問題になった。

特に話題になったのは「隣のau/ソフトバンク使いは普通に使えているのに、自分のドコモだけ繋がらない」という状況の可視化。同じ場所でキャリア間の差が目に見えることで、問題が一気に認知された。

背景にはドコモのユーザー数の多さがある。契約者数で国内最多のドコモは、同じ基地局に接続するユーザー数が他社より多くなりやすい。ユーザー密度が高い環境では構造的にパケ詰まりが起きやすく、「ドコモだから詰まる」のではなく「ドコモはユーザーが多いから詰まりやすい」という面がある。

ドコモが行った対策

設備投資の大幅増額

ドコモは2025年度の設備投資を前年度比で大幅に増額。第3四半期累計で5,658億円(前年同期比+1,327億円、+30.6%)を投入した。2025年度下期は上期の3倍のペースで5G基地局を構築する計画を進め、主要都市中心部の受信速度は2024年3月比で25%向上、全国主要鉄道動線で40%向上したと発表している。

5G SA・Massive MIMO・スモールセルの投入

5G SA(スタンドアローン)は4Gコアネットワークを経由しない5G専用の通信方式で、同時接続処理能力が大幅に向上する。ドコモは主要ターミナル駅(札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・高松・博多)とイベント会場を中心に5G SAエリアを展開。2024年7月にはNR-DC対応を開始し、受信最大6.6Gbpsを商用提供している。

Massive MIMO(大規模アンテナ)搭載基地局は2026年3月末までに全国で3.0倍にする目標を掲げた。2025年6月からはHPUE技術を全国5G基地局に導入し、10月末に全国展開を完了している。

FOMA 3G終了による帯域再利用

2026年3月31日にFOMA(3G)とiモードが完全終了した。3Gで使用していた周波数帯を4G/5Gに転用することで、通信キャパシティの増加が期待される。ただし、具体的にどの帯域がどれだけ転用されたかの公式な詳細発表は確認できていない。終了からまだ日が浅く、効果が体感に表れるにはもう少し時間がかかる可能性がある。

イベント対策の強化

年間250件以上のイベント対策を目標に掲げ、Massive MIMO搭載の移動基地局車を投入。2025年12月のコミケ107では初の「3セクタMMU車両」を含む移動基地局車3台を配備し、屋内外で5G SAに対応した。西待機列での測定では5G NSAが1.8Mbpsだったのに対し、5G SAで130Mbps超という結果が報告されている。

2026年現在の速度データ

みんなのネット回線速度の集計傾向やOpensignal等の外部調査を眺めた印象をまとめる。以下は数値で断言するものではなく、調査データを見た感触としての記録。

時間帯 ドコモの印象 他3社との比較感
朝(7〜9時) 速め 4社とも安定。ドコモは上位水準
昼(12〜13時) やや速め 4社中もっとも落ち込みが小さい印象。MNOの昼は全社安定
夕方(17〜19時) 普通 帰宅ラッシュ帯で混む。auと同程度の印象
夜(20〜23時) 遅め ドコモの弱点時間帯。au・ソフトバンクと同程度の落ち込み
深夜(0〜6時) 速い 4社トップ水準。深夜帯は全社速い

昼帯の安定性は2023年時点から継続してドコモの強み。一方、夜間(20〜23時)の落ち込みは目立ち、この時間帯に限っては「他社と大きな差はない」というのが調べた範囲での印象だった。

ドコモの速度・体感を調べた記事MNO大手4社の速度を比べた記事

外部調査の評価

Opensignal(2025年4月版、調査期間2025年1〜3月)ではauが17部門中11部門で首位と圧倒。ドコモは5Gダウンロード速度(168.0Mbps)と5Gカバレッジ体験で首位を取ったが、信頼性(Reliability)はauが首位だった。一方で地方のモバイル品質ではドコモがカバレッジ体験9.1/10で首位となっており、地方での強さは健在。

J.D.パワーの顧客満足度調査ではドコモがトップ評価を維持。「通信品質マニフェスト」34項目も全達成を発表している。ただし日経xTECHは「達成容易な目標設定ではなかったか」と指摘しており、自社評価と第三者評価の間に乖離がある。

口コミから見える変化

2023年のピーク時と比べると、Xやレビューサイト上の「ドコモ パケ詰まり」に関するトーンは変化している。2023年は「全然繋がらない」「キャリア変えたい」といった強い不満が目立ったが、2025年以降は「以前よりは良くなった」「まだ不十分だが改善は感じる」といった声が増えた印象がある。

改善を実感する声が多いのはイベント会場ターミナル駅周辺。コミケ107での5G SAの成果は特に話題になり、移動基地局車の投入効果が可視化された。駅周辺の日常利用でも「朝の新宿で以前より繋がる」といった報告がある。

一方で「まだ不十分」と感じるのは夜間帯の都市部4G/5Gハンドオーバー。夜20時台の動画視聴でバッファリングする、移動中に5Gと4Gが切り替わる瞬間に途切れるといった声は2026年時点でも残っている。

X上のパケ詰まり投稿数に関する調査(mobilelaby、2025年6〜7月)では、ドコモの投稿がau・ソフトバンクの3倍以上という結果が報告されている。ただしドコモはユーザー数が最多であり、投稿の絶対数がそのまま品質の指標にはならない点には注意が必要。

まだ残る課題

夜間帯(20〜23時)の速度低下

夜間の速度低下はMNO4社共通の傾向だが、ドコモの夜間帯はユーザー数の多さもあって落ち込みが目立つ。設備投資の効果がまず現れやすいのはイベント対策や基地局数の増強であり、夜間の日常利用の改善はやや後回しになっている可能性がある。

4G/5Gハンドオーバーの不安定さ

移動中に5Gと4Gの間を行き来するときに、一瞬通信が途切れる現象が引き続き報告されている。これはパケ詰まりとは別の問題で、基地局間の切り替え処理(ハンドオーバー)に起因する。5G SAエリアが拡大して切り替え頻度が減れば緩和されるが、現時点ではNSAエリアが主力であるため避けにくい。

5G SAエリアの限定性

コミケ107で劇的な効果を見せた5G SAだが、対応エリアはまだ限られている。主要ターミナル駅や一部の商業施設・イベント会場が中心で、住宅地や郊外では4GまたはNSAでの接続がほとんど。5G SAの恩恵を受けるには対応端末も必要であり、すべてのドコモユーザーが恩恵を受けられる状態ではない。

FOMA終了の効果は「まだ分からない」

2026年3月31日のFOMA完全終了で帯域再利用が始まったが、終了からまだ日が浅く、体感レベルでの変化報告は少ない。理論上はキャパシティの増加に寄与するが、実際にどの程度の帯域が4G/5Gに転用されたかの公式な詳細は確認できていない。効果が見えるのはこれからだろう。

2026年度の投資額削減

ドコモは2026年度のネットワーク投資を2025年度比で約300億円削減する計画を示している。2025年度の集中投資が一定の成果を上げたことで「積極投資フェーズ」から「維持フェーズ」に移行しつつあるとも読めるが、削減がユーザー体験に影響するかは注視が必要。

ドコモはイベント会場で繋がらない?調べた記事パケ詰まりの仕組みを整理した記事

口コミから拾ったもの

価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。

「コミケ107(2025年12月)のドコモ回線が爆速だった。5G SAエリアで130Mbps以上出ていた。西待機列で隣の人が5G NSAで1.8Mbpsだったのを見ると、SA対応端末かどうかで天と地の差」
ITmedia Mobile / TechnoEdge(2025年12月)
「新宿駅の朝ラッシュで以前は全然ダメだったのが、2024年後半くらいから普通に使えるようになった。Xが開かなかった頃と比べると明らかに改善された」
個人ブログ(2024年6月)
「宮城・岩手の山間部でも安定して繋がる。ソフトバンクの同行者が圏外になる場所でもドコモは電波が入っていた。地方の安心感はやはりドコモ」
価格.com クチコミ(2025年)
「夜20時台に都内のオフィスビルでYouTubeがバッファリングするのは2026年になっても変わらない。昼より夜のほうが遅いのは体感として確か。設備投資の効果はまだ夜には届いていない印象」
X(旧Twitter)(2026年2月)
「5Gと4Gの切り替わりで一瞬途切れる現象がまだある。電車で移動中に5G→4G→5Gと変わるたびに数秒止まる。パケ詰まりとは違うが、体感としてはストレス」
価格.com クチコミ(2025年)
「デュアルSIMでドコモとauを使い分けている。都内の混雑時はauのほうが安定する場面が多い。ただドコモも2023年頃と比べると明らかにマシになっている」
X(旧Twitter)(2025年10月)
「FOMA終了で帯域が空いたはずだが、正直なところ体感で違いは分からない。もともと4G/5Gが主力だったので、3G帯域の転用効果が見えるにはもう少し時間がかかるのかも」
X(旧Twitter)(2026年4月)
「2025年夏の花火大会でドコモは去年より確実にマシだった。写真の送信に10分かかっていたのが、今回は30秒で送れた。ただau使いの友人はもっとサクサクだった」
X(旧Twitter)(2025年8月)

まとめ

  • 外部調査の評価は割れている。Opensignal(2025年4月版)ではauが17部門中11部門で首位、ドコモは3部門で単独首位にとどまった。一方J.D.パワーではドコモがトップ評価。「改善したか」は測定指標によって結論が変わる状態
  • 時間帯別では、昼12〜13時の安定性は4社中トップ水準を維持している。一方で夜20〜23時の落ち込みはau・ソフトバンクと同程度で、この時間帯でのドコモ優位は確認できなかった。改善効果が時間帯によって偏っている可能性がある
  • 設備投資は前年度比30%増(2025年度第3四半期累計で5,658億円)、「通信品質マニフェスト」34項目は全達成。コミケ107での5G SA実証では劇的な改善が確認されたが、日常的な全面改善を裏付けるデータは限定的。マニフェストの目標設定自体が保守的だったのではないかという指摘もある
  • FOMA 3G終了(2026年3月31日)で帯域再利用が始まったが、体感レベルの変化報告はまだ少ない。5G SAの普及が本質的な改善策だが、対応エリアは主要ターミナル駅とイベント会場の一部にとどまる。構造的な改善にはまだ時間がかかる
  • 留保: X上のパケ詰まり投稿数がau・ソフトバンクの3倍以上という調査がある一方、ドコモはユーザー数が最多であり、報告の絶対数だけでは品質の良し悪しを判断できない。地域・時間帯・端末(5G SA対応かどうか)によって体験は大きく異なるため、一概に「改善した/していない」とは言い切れない
MEMO
ドコモの品質問題は「2023年の危機→大規模投資→段階的改善」という経過をたどっている。投資規模と取り組みの本気度は数字に表れているが、ユーザー数最多という構造的要因がある以上、混雑環境では他社より不利になりやすい。現時点での印象は「以前より明確に改善した。ただし完全解消ではなく、改善途上」。5G SAの普及が鍵だが、その恩恵を受けられるユーザーはまだ限られている。