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楽天モバイルのプラチナバンド — 繋がりやすさは変わったか調べてみた

※ 個人の調査メモです。公的機関ではありません。
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。

調べたこと

2023年10月、楽天モバイルは念願のプラチナバンド(700MHz帯)の認可を取得した。2024年6月に商用サービスを開始し、2026年4月で約1年10ヶ月が経過。「繋がりにくい」と言われ続けた楽天モバイルの弱点は解消されたのか。展開状況・口コミ・構造的な課題を調べた。

楽天モバイル全体の速度・体感は「楽天モバイルの速度・体感を調べてみた」にまとめている。ここではプラチナバンドに絞って「何が変わったか、何が変わっていないか」を追う。

プラチナバンドとは

プラチナバンドとは、700〜900MHz帯の低い周波数帯のこと。電波が建物を回り込み、壁やコンクリートを透過しやすい特性がある。地下・屋内・ビルの谷間など、高い周波数帯では届きにくい場所でも電波が届きやすくなる。

ドコモ・au・ソフトバンクの3社は長年プラチナバンドを保有しており、建物内・地下での「繋がりやすさ」の土台になっている。楽天モバイルは2020年の本格参入以来、主力の1.7GHz帯(Band 3)だけで戦ってきた。1.7GHz帯は速度は出るが建物貫通力が弱く、「外では速いのに屋内で圏外」という弱点がずっと指摘されてきた。

2023年10月、総務省から700MHz帯(Band 28)の割当を受け、2024年6月27日に東京都内で商用サービスを開始。楽天モバイルとしてはMNO参入から4年越しのプラチナバンド取得だった。

展開状況(2026年4月現在)

楽天モバイルのプラチナバンド展開は、計画と実績の間に大きな乖離がある。

項目 内容
認可 2023年10月(総務省、700MHz帯 3MHz×2)
商用開始 2024年6月27日(東京都世田谷区から)
計画基地局数 令和15年度末までに10,661局(人口カバー率83.2%目標)
2025年度実績 250局程度との報道(ダイヤモンド・オンライン)
帯域幅 3MHz×2(他3社は10〜15MHz×2)
展開方針 都市部のすき間(ビル間・地下)を優先。地方は衛星通信との組み合わせ

商用開始当初は東京都世田谷区の1局からスタートし、2024年11月時点で「複数局を運用中」と発表された。2025年度末の実績は250局程度とされ、10,661局の最終目標に対して序盤のペースは非常に遅い。楽天モバイル側は「前半は数百局ペースで推移し、後半に加速する」としているが、計画との乖離は大きい。

背景には楽天グループ全体の財務状況がある。楽天モバイルは2025年度にEBITDA黒字化を達成したが、赤字圧縮のためのコスト削減が続いており、プラチナバンドの基地局投資にも影響しているとみられる。設備投資額は令和15年度末までに544億円の計画だが、投資の前倒しは難しい状況にある。

繋がりやすさの変化

改善が報告されている場面

プラチナバンドのエリア内では、これまで圏外だった場所で繋がるようになったという報告が出ている。特に多いのは以下の場面。

  • 地下鉄の駅間トンネル(東京メトロ・横浜市営地下鉄等)
  • オフィスビルの地下階・奥まったフロア
  • 大型商業施設のフードコート・奥の店舗
  • マンションの室内(特にコンクリート造の低層階)

マイナビニュースが実施した465人アンケートでは、プラチナバンド開始後に繋がりやすさの満足度が3.33→3.49に上昇。改善を感じたユーザーは18.7%で、悪化を感じたのは4%にとどまった。

変化を感じていない場面

一方で「変わらない」という声も多い。主な理由は以下の通り。

  • そもそもプラチナバンドのエリア外(250局程度ではカバレッジが限定的)
  • 端末がプラチナバンド(Band 28)に非対応
  • もともと1.7GHz帯で繋がっていた場所では変化を感じにくい
  • 地方・郊外はプラチナバンドの展開対象外(都市部優先のため)

プラチナバンドの効果は「今まで繋がらなかった場所で繋がるようになる」こと。もともと繋がっていた場所では体感しにくく、エリア外では当然効果がない。現時点での効果は「都市部の屋内・地下に限定的」という状態。

速度への影響

プラチナバンドで速度が上がるか——結論から言うと、速度向上はほぼ期待できない。

楽天モバイルに割り当てられた700MHz帯は3MHz×2という非常に狭い帯域幅。他3社のプラチナバンドが10〜15MHz幅であるのに対し、3分の1から5分の1の幅しかない。2レイヤーMIMO・256QAMを適用しても理論最大速度は下り約30Mbps。実測ではさらに低く、口コミでは地下で3〜10Mbps程度という報告が多い。

キャリア プラチナバンド帯域 帯域幅
NTTドコモ 700MHz / 800MHz / 900MHz 合計30MHz以上
au(KDDI) 700MHz / 800MHz 合計20MHz以上
ソフトバンク 700MHz / 900MHz 合計20MHz以上
楽天モバイル 700MHz 3MHz

さらに、3MHz幅ではキャリアアグリゲーション(CA)に対応できないため、他の帯域と束ねて速度を上げることもできない。楽天モバイル自身も700MHz帯を「速度向上ではなくエリア補完に使う」と明言しており、速度面での期待は最初から想定されていない。

つまりプラチナバンドの効果は「0Mbps(圏外)が3〜10Mbpsになる」ことであり、「50Mbpsが100Mbpsになる」ではない。この点は誤解されやすいが、繋がることと速いことは別の問題。

KDDIローミング終了との関係

楽天モバイルのカバレッジを語る上で避けて通れないのが、KDDIとのローミング契約。楽天回線が届かないエリアではau回線(パートナーエリア)に自動切替する仕組みで、特に地方ではこの仕組みに大きく依存している。

現在のローミング契約は2026年9月30日が期限。KDDI側は楽天の自社回線構築が進んだエリアから段階的にローミングを終了していく方針を示している。楽天モバイルの人口カバー率は99.9%とされるが、4Gで保有する周波数は1.7GHz帯(20MHz)とプラチナバンド(3MHz)のみ。帯域の総量が他3社と比べて圧倒的に少ない。

ローミング終了後に問題が顕在化しやすいのは以下のケース。

  • 楽天回線のカバー率は高くても帯域が薄い地域(繋がるが遅い)
  • 地方の山間部・農村部(楽天自前回線のみではカバーしきれない可能性)
  • 屋内・地下でプラチナバンドが未展開のエリア

ローミング契約の延長については「両社協議の上で決定」とされており、完全終了ではなく部分的に継続する可能性もある。ただし、楽天モバイルとしてはローミング費用の削減が黒字化の鍵であり、早期の自前回線移行を目指している。プラチナバンドの展開ペースが鍵を握る構図になっている。

楽天モバイルの速度・体感を調べた記事地方・山間部で繋がりやすいキャリアを調べた記事

他社との構造的な差

プラチナバンドを「持っている」ことと「他社と同等に使える」ことは別の問題。楽天モバイルと他3社の間には以下の構造的な差がある。

帯域幅の差

他3社のプラチナバンドは複数の帯域を保有し合計20〜30MHz以上。楽天は3MHzのみ。同時接続数と速度の上限が根本的に異なる。混雑環境での収容力に差が出やすい。

展開歴の差

ドコモ・au・ソフトバンクは10年以上かけてプラチナバンドの基地局を全国に展開してきた。楽天は商用開始から2年足らずで250局程度。全国網羅には年単位の時間が必要。

メインバンドとの補完関係

他3社はプラチナバンドを「面でカバーする基盤」、中〜高周波数帯を「速度を出す手段」として使い分けている。楽天は1.7GHz帯がメインバンドで、プラチナバンドは「すき間を埋める補助」という位置づけ。役割が逆転しているわけではないが、基盤の厚みが違う。

衛星通信という別の手段

楽天モバイルはAST SpaceMobileとの提携による衛星直接通信(スマートフォンから直接衛星に接続)を2026年内に提供予定としている。地方・山間部の圏外解消はプラチナバンドだけでなく衛星通信との組み合わせで進める戦略。これは他3社にはない(まだ実用化していない)アプローチで、実現すれば地方カバレッジの考え方自体が変わる可能性がある。ただし商用開始の具体的な時期は未定。

MNO大手4社の速度を比べた記事地下鉄・屋内で繋がらないキャリアを調べた記事

口コミから拾ったもの

価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。

「プラチナバンド対応のiPhone 15に変えてから、東京メトロの駅間トンネルで圏外になる頻度が明らかに減った。以前は半蔵門線の渋谷〜表参道間で毎回切れていたのが、今は繋がったまま」
X(旧Twitter)(2025年)
「横浜市営地下鉄ブルーラインの車内で速度計測したら50Mbps超えた。プラチナバンド開始前は地下鉄で楽天は使い物にならなかったので、確実に変わっている」
個人ブログ(2025年)
「オフィスビルの地下1階で以前は完全圏外だったのが、いつの間にかアンテナが立つようになっていた。速度は10Mbps程度だが、繋がること自体が大きい」
価格.com クチコミ(2025年)
「正直、プラチナバンドが始まったと聞いても体感で変わった印象がない。自宅(木造2階建て)でも外出先でも以前と同じ。エリアが狭すぎるのでは」
X(旧Twitter)(2025年)
「繋がるようにはなったが速くはない。地下で繋がっても3〜5Mbps程度のことが多い。auの友人は同じ場所で40Mbps出ていたので、プラチナバンドの帯域幅の差なのかなと思う」
X(旧Twitter)(2026年1月)
「群馬の実家(前橋市街地から車で20分くらいの田舎)では変化なし。そもそもプラチナバンドのエリアに入っていない。都市部だけの話という印象」
価格.com クチコミ(2025年)
「KDDIローミングが終わったら地方はどうなるのか不安。今はパートナー回線でなんとかなっているが、楽天自前だけで同じカバレッジを維持できるとは思えない」
マイネ王 掲示板(2026年)
「以前は大型ショッピングモールの奥まったフードコートで圏外になることがあったが、最近は繋がるようになった。プラチナバンドの効果かどうかは分からないが、時期的にはそうだと思う」
個人ブログ(2025年)

まとめ

  • プラチナバンド基地局の展開は計画を大幅に下回っている。認定時の計画は令和15年度末までに10,661局だが、2025年度の実績は250局程度との報道がある。初期は数百局ペースで推移し、後半に加速するシナリオのようだが、現時点では都市部の限られたエリアにとどまる
  • 効果が出ているのは「繋がらなかった場所で繋がるようになった」という接続改善であり、速度向上ではない。帯域幅が3MHz×2と狭く(他3社は10〜15MHz)、理論最大速度も約30Mbps。キャリアアグリゲーションも非対応で、速度面では構造的にハンデがある
  • アンケート調査では満足度が3.33→3.49に微増(マイナビニュース、465人調査)。改善を感じたユーザーは18.7%、悪化を感じたのは4%。地下鉄駅間・屋内奥まった場所での改善報告が目立つ一方、地方・郊外ではエリア外のため変化を感じないという声が多い
  • KDDIローミング契約の期限(2026年9月30日)が迫っている。KDDI側は重複エリアから段階的に終了を進めており、楽天モバイルの人口カバー率は99.9%とされるが、4Gで保有するのは1.7GHz帯(20MHz)とプラチナバンド(3MHz)のみ。帯域の薄さが今後のカバレッジ維持の懸念材料
  • 留保: プラチナバンドの本格的な効果が出るのはこれから。基地局展開が計画通りに加速すれば状況は大きく変わる可能性がある。また楽天モバイルはAST SpaceMobileとの衛星直接通信を2026年内に提供予定としており、地方の圏外解消はプラチナバンドとは別の手段でも進む可能性がある
MEMO
プラチナバンドは「楽天モバイルの弱点だった屋内・地下の繋がりにくさを解消する切り札」として期待されてきた。実際に都市部の一部では効果が出始めているが、展開ペースの遅さと帯域幅の狭さという構造的な制約がある。「プラチナバンドが来たから安心」ではなく「プラチナバンドは来たが、まだ始まったばかり」というのが2026年4月時点の印象。KDDIローミング終了後の地方カバレッジが正念場になる。