イベント・人混みで繋がらない問題を調べてみた
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。
調べたこと
花火大会・音楽フェス・コミケ・スポーツ観戦・年越しなど、大勢が集まるイベントで「スマホが繋がらない」問題について調べた。
各キャリアの公式発表・ニュース記事・口コミから、キャリアごとの対応状況と傾向を整理した。プラン料金や契約の話ではなく、「イベント会場で繋がるか」だけに絞っている。
なぜイベントで繋がらなくなるのか
「アンテナは立っているのに繋がらない」——イベント会場でよくある状況。これは電波が届いていないのではなく、基地局の処理能力を超えている状態。いわゆる「パケ詰まり」と呼ばれる現象。
1つの基地局が同時に処理できる接続数には上限がある。花火大会では数万〜数十万人が半径数百メートルに集中するため、周辺の基地局がパンクする。電波の「通り道」が渋滞している状態に近い。
5Gは4Gより同時接続数が大幅に増えるため改善が期待されているが、5Gエリアが限られるイベント会場ではまだ恩恵を受けにくい場所もある。各キャリアは大型イベントに合わせて移動基地局車や臨時基地局を配備して対処している。
パケ詰まりの詳しいメカニズム(MNOとMVNOの違い、キャリア別の傾向、対処法)は「パケ詰まりが起きやすいキャリア・状況を調べてみた」にまとめている。
キャリア別の傾向
NTTドコモ — 大規模投資で挽回中
2023年に都市部でパケ詰まりが多発し社会問題化。これを受けて300億円規模の設備投資を実施し、全国2,000ヶ所以上で改善工事を行った。2024年2月時点で改善率90%以上と発表している。
イベント対策も大幅に強化。2024年は前年比2倍の232イベントで対策を実施。2025年度は250件以上を目標としている。大曲花火では通信容量を2倍に、東北三大祭りでは1.5倍に拡大した実績がある。
コミケでの改善が顕著。C103(2023年12月)では移動基地局車を3台→4台に増やし5G対応を開始。C107(2025年12月)ではITmediaの計測で下り200Mbps超を記録。2年間で劇的に改善した。
※ ahamo・irumoもドコモ回線のため同じ傾向。→ ドコモの速度を調べた記事
au(KDDI)— Starlink活用が独自色
イベント対策の3本柱は「既存基地局の増強」「移動基地局車・可搬基地局の配備」「Starlink Wi-Fiによるオフロード」。特にStarlinkの活用は他社にない特徴。
ROCK IN JAPAN 2024ではStarlinkアンテナをフードエリアに11基配置(前年は3基)。一般来場者向けと決済端末用を分離し、電子マネー決済の安定性も確保した。9つの音楽フェスで計18万人以上がStarlink Wi-Fiを利用した実績がある。
コミケC106(2025年8月)では前年比2倍の9基(車載型3基+可搬型6基)を配備。一部にデュアルバンドMassive MIMO対応機を導入し、2つの5G周波数を同時処理できるようにした。
※ povo・UQ mobileもau回線のため同じ傾向。→ auの速度を調べた記事
ソフトバンク — 5G SA+移動基地局車の組み合わせ
移動基地局車と高所作業車を組み合わせたイベント対策が中心。2ヶ月以上前から準備を開始し、会場の見通しや光回線の引き込み位置を考慮してアンテナ設置場所を決める。
Pokemon GO Fest 2025(大阪)では移動基地局車3台を配備し、中央に高所作業車を据えて広域カバーを実現した。花火大会では「花火の見える位置を邪魔しない」ことも含めた場所選定が行われている。
コミケC106では屋内外で5G SA環境を構築。SA化により4G LTEへの負荷分散が進み、混雑時の安定性が向上するとしている。東側待機列エリアにはStarlink Business Wi-Fiも追加された。
※ LINEMO・Y!mobileもソフトバンク回線のため同じ傾向。→ ソフトバンクの速度を調べた記事
楽天モバイル — ユーザー数の少なさが二面性
大型イベントで臨時基地局を配備している。隅田川花火大会(2024年7月)、ROCK IN JAPAN 2024、コミケC104などで対策を実施。
契約者数が約1,000万人と大手3社(各3,000万〜8,000万人)より少ないため、イベント会場で「周囲がドコモ・auで混雑しているなか楽天だけ繋がった」という声がある。ただしこれはネットワーク品質の優位性ではなく、単にユーザー密度が低いことによる。
逆に基地局数・臨時対策の規模も大手3社より小さい。今後ユーザーが増えた場合に同じ余裕があるかは不明。プラチナバンド(700MHz帯)の展開が進めば屋外イベントでのカバレッジは改善する可能性がある。
イベント種別ごとの傾向
花火大会
数万〜数十万人が河川敷や公園に集中するため、最も繋がりにくくなるイベントの代表格。花火が上がっている間(一斉に撮影・配信)が最もきつく、打ち上げの合間に少し回復するパターンが多い。各キャリアとも主要花火大会には臨時基地局を配備しているが、来場者数に対して追いつかないケースがある。
音楽ライブ・フェス
屋外フェスは花火大会に似た状況。屋内ドーム・アリーナ公演では常設のDAS(分散アンテナシステム)が入っている主要会場なら比較的マシだが、終演直後の「全員がスマホを開く瞬間」は一時的に詰まりやすい。auがStarlink Wi-Fiで先行しているジャンル。
コミケ(コミックマーケット)
かつては「最も繋がらない場所」だったが、4社とも対策を公式PRするようになり、近年は大幅に改善。特にドコモはC103→C107で劇的な速度改善を見せている。ただし待機列エリアと会場内で状況が異なり、屋外待機列は依然としてカバーが弱い場所がある。
スポーツ観戦(スタジアム)
固定会場のため常設基地局やDASが整備されていることが多い。ハーフタイム・イニング間の休憩時間に一斉利用で遅くなる傾向はあるが、花火大会ほどの深刻さにはなりにくい。
年越し・初詣
0時前後の「あけおめ」メッセージ集中が最大のピーク。主要神社仏閣には臨時基地局が配備されるが、花火大会と同様に全キャリアで繋がりにくくなる。1時を過ぎると徐々に回復する傾向。
口コミから拾ったもの
価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。
まとめ
- イベント混雑での繋がりにくさは全キャリア共通だが、対策の方向性に差が出ている。auはStarlink Wi-Fiによるオフロード、ドコモは5G基地局の大量投入、ソフトバンクは5G SA+移動基地局車という棲み分けが見える
- ドコモは2023年のパケ詰まり問題を受けて300億円規模の設備投資を実施。2024年にはイベント対策を前年比2倍の232件に拡大。コミケでの速度改善は数値でも確認されており、回復傾向が明確
- auのStarlink活用は他社にないアプローチで、音楽フェスでの実績(9フェスで18万人利用)は具体的。ただしWi-Fiへの接続切替が必要で、セルラー通信の改善とは性質が異なる
- 楽天モバイルはユーザー数が約1,000万人と大手3社より少ないため、イベント会場で「逆に空いている」という声がある。ただしこれは裏を返せば基地局投資もイベント対策の規模も小さいということで、今後ユーザーが増えれば状況は変わる可能性がある
- どのキャリアを使っていても、花火のクライマックスや年越しカウントダウンの瞬間など「全員が同時にスマホを使う」タイミングでは繋がりにくさから逃れるのは難しい。キャリア差が出やすいのはそのピーク前後の時間帯
- 各キャリアの公式サイトにイベント対策情報が掲載されている。大規模イベントに行く場合は事前に確認しておくと混雑状況の目安になる。ただし対策の有無と実際の体感は必ずしも一致しない点は留保が必要
- NTTドコモ — ネットワーク品質の取組み宣言(2025年度)
- NTTドコモ — イベント対策一覧
- NTTドコモ — コミケ通信品質への取り組み
- KDDI — コミケC106 ネットワーク対策(2025年8月)
- KDDI Tobira — 音楽フェスとStarlinkの取り組み
- au — Starlinkイベント・フェスWi-Fi
- ソフトバンクニュース — 花火大会のパケ詰まり対策
- ソフトバンク — イベント対策情報
- 楽天モバイル — イベント時のネットワーク対策
- ITmedia — ドコモC107「爆速」レポート(2025年12月)
- ケータイWatch — 花火大会でスマホが繋がりにくくなる理由