通信障害の多いキャリアを調べてみた
※ 速度データは調査時点のもの。最新情報は各社の公式ページでご確認ください。
調べたこと
大手4社(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル)の通信障害について、2018年以降の主要な事例とキャリア別の傾向を調べた。
「繋がらない」原因全般については「スマホが繋がらない原因をキャリア別に調べてみた」にまとめている。ここでは通信障害(キャリア側の設備・システム起因の不通)に絞って整理した。
大手4社の主要通信障害(2018〜2025年)
総務省への重大事故報告に該当した、または社会的に大きく報じられた通信障害を時系列で整理した。
| 時期 | キャリア | 期間 | 影響規模 | 原因 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年7月 | au(KDDI) | 約86時間 | 最大約3,091万人 | メンテナンス中のルーティング設定ミス → VoLTE交換機に輻輳波及 |
| 2021年10月 | NTTドコモ | 約29時間 | 最大約1,290万人 | IoT機器の大量信号(位置登録)がネットワークに輻輳を引き起こし |
| 2018年12月 | ソフトバンク | 約4.5時間 | 全国(約3,060万回線) | エリクソン製設備のCA証明書期限切れ(世界同時発生) |
楽天モバイルは2020年の本格サービス開始以降、総務省への重大事故報告に該当する規模の障害は確認できていない。ただし局所的・短時間の障害は散発的に報告されている。
障害の原因パターン
通信障害の原因はいくつかのパターンに分類できる。
ソフトウェア・設定起因
au 2022年障害(ルーティング設定ミス)、ソフトバンク 2018年障害(CA証明書期限切れ)がこのパターン。メンテナンス中の人為ミスや、ソフトウェアの期限切れなどが引き金になり、それが連鎖的に拡大する。現代の通信ネットワークはシステムが複雑に連携しているため、一箇所の障害が全体に波及しやすい。
輻輳(ふくそう)の連鎖
ドコモ 2021年障害がこのパターン。IoT機器からの信号が集中してネットワークが輻輳し、復旧のために接続を絞ったことで「繋がらない」状態が長期化した。障害そのものより、復旧手順に時間がかかるケースがある。
外的要因(災害・ケーブル切断)
地震・台風・洪水による基地局の停電や光ファイバーの切断。能登半島地震(2024年1月)では複数のキャリアの基地局が長期間停波した。この場合は特定キャリアだけの問題ではなく、地域全体の通信インフラに影響する。
総務省の重大事故報告制度
電気通信事業法では、一定規模以上の通信障害を「重大な事故」として総務省への報告を義務づけている。2022年の制度改正後の基準は:
- ・影響利用者数が3万人以上かつ1時間以上継続
- ・または、緊急通報(110/119)が1時間以上利用できない状態
この基準に達しない中小規模の障害は報告義務がないため、公式には「障害なし」となる。実際には数百人〜数千人規模の局所障害はどのキャリアでも起きているが、統計に反映されにくい。
「通信障害の多いキャリア」を重大事故報告の件数だけで判断するのは片手落ちで、報告基準以下の小規模障害の頻度まで含めないと実態は分からない。ただし小規模障害のデータは体系的に公開されていないため、客観的な比較は難しい。
キャリア別の傾向と対策状況
NTTドコモ
2021年10月の大規模障害(IoT輻輳)以降、IoT信号の制御機構を改善し、同種の障害の再発防止策を講じている。災害対応では大型移動基地局車、衛星通信(Starlinkとの提携)、船上基地局など多様な手段を持っており、能登半島地震では4社のなかで最も早く応急復旧したとされている。
歴史的にネットワーク投資が最も大きいキャリアであり、冗長化の度合いは高い。ただしユーザー数が最多であるため、障害時の影響人数も最大になりやすい構造がある。
au(KDDI)
2022年7月の障害は近年の国内通信障害のなかで最大級(86時間、約3,091万人)。メンテナンス中のルーティング設定ミスがVoLTE交換機に波及し、復旧に3日以上を要した。総務省の行政指導を受け、コアネットワークの冗長構成強化、メンテナンス手順の見直しを実施。
2022年障害以降は大規模障害なく推移しており、再発防止策が機能していると見られる。ただし「あの障害の印象が強すぎて乗り換えた」という声は今でもある。
ソフトバンク
2018年12月の障害(エリクソン製設備のCA証明書期限切れ)は世界11ヵ国で同時に発生した事象で、ソフトバンク固有の問題ではなかった。復旧は約4.5時間と、au・ドコモの大規模障害と比べると短時間で収束。
それ以降、全国規模の重大障害は報じられておらず、大手4社のなかでは近年の大規模障害が最も少ないキャリアと言える。ただしこれは「たまたま起きていない」だけかもしれず、将来の保証にはならない。
楽天モバイル
2020年の本格サービス開始以降、総務省への重大事故報告に該当する全国規模の障害は確認できていない。一方で、局所的な障害(特定地域で1〜2時間通信不可)が散発しているという口コミがある。
新規参入キャリアとしてネットワークの成熟度は大手3社に及ばない面がある。災害時の応急復旧体制(移動基地局車の台数、衛星通信の活用)も大手3社と比べると規模が小さい。通信障害の「頻度」は低くても、「起きたときの対応力」には差がある可能性がある。
通信障害に備えるには
「障害が起きないキャリアを選ぶ」のは不可能。どの社も障害を起こしうる。備えるなら「障害が起きたときに通信を維持できる状態」を作るほうが現実的。
デュアルSIM / サブ回線を持つ
最も有効な対策。異なるMNOの回線を2つ持てば、片方が障害でももう片方で通信できる。重要なのは異なるMNOの回線にすること。ドコモ本回線 + IIJmio(ドコモ回線)では、ドコモ障害時に両方止まる。
組み合わせ例:
- ・ahamo(ドコモ系)+ povo2.0(au系、基本料0円)
- ・LINEMO(ソフトバンク系)+ 日本通信SIM(ドコモ系、月290円〜)
- ・楽天モバイル(楽天系)+ IIJmio(ドコモ or au回線)
Wi-Fiスポットの把握
モバイル回線が止まってもWi-Fiは使える。自宅の光回線Wi-Fi、職場のWi-Fi、コンビニ・カフェのフリーWi-Fiなど、日常の行動圏内でWi-Fiが使える場所を把握しておく。
障害情報の確認手段
モバイル回線が止まると、そもそも障害情報を確認できないという矛盾がある。Wi-Fiがない場合の確認手段:
- ・サブ回線(デュアルSIM)で確認
- ・周囲の人に聞く(同じキャリアのユーザーが同様に困っていれば障害の可能性大)
- ・テレビ・ラジオ(大規模障害はニュースで報じられる)
緊急連絡手段の確保
大規模障害時には公衆電話が最後の砦になる。近くの公衆電話の場所を知っておくのは意外と重要。NTT東西の公衆電話設置場所検索で確認できる。また、災害時には通信各社が公衆Wi-Fiを無料開放することがある(「00000JAPAN」)。
JAPANローミング(2026年4月1日開始)
2026年4月1日から、大手4社(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル)が共同で「JAPANローミング」を開始した。大規模災害や重大な通信障害が発生した際に、自社の回線が使えなくなっても他社の4G LTE回線に自動的に接続できる仕組み。
2つのモードがある:
- ・緊急通話モード — 手動で有効化。緊急通報(110/119)のみ他社回線経由で可能
- ・フルローミングモード — 自動接続。音声通話+データ通信が他社回線で利用可能
利用料は無料、事前登録も不要。ただし対応端末は2026年春以降に発売される端末から段階的に広がる予定で、既存端末がすべて対応しているわけではない。
au 2022年障害のような大規模障害が今後発生した場合、JAPANローミングによって「まったく通信できない」状態を回避できる可能性がある。デュアルSIMの代替にはならないが、端末1台でも一定の冗長性を確保できる点は大きい。
今後の見通し
JAPANローミングの開始により、キャリア単体の障害に対する「最後の安全網」が初めて制度的に整備された。ただし対応端末の普及には時間がかかり、即座にすべてのユーザーが恩恵を受けられるわけではない。
通信障害は「ゼロにできない」リスクとして受け入れるしかない。4社すべてが冗長化投資を進めているが、ネットワークが複雑化するなかで新しい種類の障害が発生する可能性は常にある。
総務省は2022年の制度改正で重大事故の報告基準を厳格化し、緊急通報(110/119)への影響も報告対象に加えた。各社への監督が強化されたことで、障害対策への投資は増える方向にある。
一方で、社会全体のモバイル通信依存度は年々高まっており、障害が起きたときの影響は今後ますます大きくなる。決済・交通・認証がスマホに集約されるなかで、JAPANローミングとデュアルSIMを組み合わせた冗長化が今後のスタンダードになっていく可能性がある。
口コミから拾ったもの
価格.com・X(旧Twitter)・個人ブログ・ニュース記事等から。サンプル数が少なく偏りがある可能性あり。
まとめ
- 2018年以降の重大障害を見ると、au 2022年(86時間・3,091万人)とドコモ 2021年(29時間・1,290万人)が突出して影響が大きい。ただし「障害の多さ」と「普段の安定性」は別の話で、大規模障害を1回起こしたキャリアが日常的に不安定というわけではない
- 各社とも障害後に再発防止策と冗長化投資を行っている。auは2022年障害後にコアネットワークの冗長構成を強化、ドコモは2021年障害後にIoT信号の制御機構を改善。同じ原因での再発リスクは低下しているが、新しい種類の障害が起きる可能性は残る
- 楽天モバイルは総務省への重大事故報告に該当する大規模障害は少ないが、局所的な障害が散発しているという声がある。報告基準(3万人以上・1時間以上等)に達しない中小規模の障害は、どのキャリアでも起きており、公式発表に上がらないものも多い
- 通信障害への唯一の「キャリアに依存しない」対策はデュアルSIM。異なるMNO回線(ドコモ系+au系など)を持つことで、片方が障害でも通信を維持できる。MVNOはMNOの障害に巻き込まれるため、分散するなら異なるMNOの組み合わせが必要
- ただし災害時の対応(応急復旧・衛星通信・移動基地局車の配備)は大手3社が圧倒的に手厚い。楽天モバイルは参入歴が浅く、この面での実績データはまだ限られている